第一章  初恋の花

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「東西高に入るには何かを捨てなきゃあならない。僕には捨てるものといえば陸上しかないからね」 更に 「このままじゃ、どっちもどっちということになってしまいそうだし、先のことを考えると、僕の場合は陸上をやめたほうがいいと思うんだ」 「それじゃあやっぱり東西校を目指すの!?」 「うん。お父さんの希望でもあるしね」 「そう。大変だよね」 「でも東西校に入ってしまうと、お父さんが一人になってしまうだろ。少し心配なんだ」 千佳は二度頷いて 「たっちゃんの優しさね」 「お父さんは寂しがり屋だから」 「そうね、おじさんの仕事が仕事だし………。それでおじさんは何て言ってるの」 「だからお父さんは、東西高が希望だって言ってるじゃない」 「あっ、そっか。テへ」 千佳は舌を出して笑った。そして気を取り直して 「なら、何の問題もないじゃない」 「簡単に言うよな千佳は、でも僕にとっては結構深刻な問題なんだぜ」 達也は苦笑しながらも、千佳のさらっとした言葉は好きだった。いつでもそうである。千佳が誰かと同じ言葉を言っても、その響きは他人(ひと)とは何かが違っていた。 「お父さんが早く再婚でもしてくれれば心配しなくてもいいけど、何だかそんな気はまだなさそうだし………」 千佳は目を輝かせて。 「ね、たっちゃん、名案があるわ」 「ん………?」     
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