1人が本棚に入れています
本棚に追加
「東西高に入るには何かを捨てなきゃあならない。僕には捨てるものといえば陸上しかないからね」
更に
「このままじゃ、どっちもどっちということになってしまいそうだし、先のことを考えると、僕の場合は陸上をやめたほうがいいと思うんだ」
「それじゃあやっぱり東西校を目指すの!?」
「うん。お父さんの希望でもあるしね」
「そう。大変だよね」
「でも東西校に入ってしまうと、お父さんが一人になってしまうだろ。少し心配なんだ」
千佳は二度頷いて
「たっちゃんの優しさね」
「お父さんは寂しがり屋だから」
「そうね、おじさんの仕事が仕事だし………。それでおじさんは何て言ってるの」
「だからお父さんは、東西高が希望だって言ってるじゃない」
「あっ、そっか。テへ」
千佳は舌を出して笑った。そして気を取り直して
「なら、何の問題もないじゃない」
「簡単に言うよな千佳は、でも僕にとっては結構深刻な問題なんだぜ」
達也は苦笑しながらも、千佳のさらっとした言葉は好きだった。いつでもそうである。千佳が誰かと同じ言葉を言っても、その響きは他人(ひと)とは何かが違っていた。
「お父さんが早く再婚でもしてくれれば心配しなくてもいいけど、何だかそんな気はまだなさそうだし………」
千佳は目を輝かせて。
「ね、たっちゃん、名案があるわ」
「ん………?」
最初のコメントを投稿しよう!