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「あ、また会った。こんばんは」
一階のホールでエレベーターを待っていたのは、先ほど書庫で顔を合わせた本間という女性だった。
会社の特別休暇でゆっくり本を読みたくなったと語り、閲覧席で紅茶をすすめてくれた。
確かにこのプレシャスの住人だとも聞いていたが、森本ともかなり親しいようだ。
その証拠に、森本が大事に抱えた紙袋を目に留めるなり、にやりと笑った。
「森本さん、それ、片桐さんからせしめたでしょ?実は、私のものになるはずだったワインなんですけど?」
「あれれ。悪いことはできないなあ」
「ということは、やっちゃいましたか?」
「そうだね、やっちゃってたね」
「ああ・・・、とうとう」
そして、二人は顔を見合わせるなり、げらげらと笑いだした。
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