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いぞう達は、『夏といえば心霊スポット!』という山本の提案で、肝試しに来ていた。
メンバーは会社仲間。提案者の山本、その先輩であるいぞう。そして、同じ開発部に所属する若い女性二人、工藤みさきと竹野ゆりこだった。
「しかし、意外でした。池手名さんが幽霊に興味あるなんて」
「当然あるよ。幽霊といえば、夏の風物詩と言っても過言ではない。僕の中で幽霊は海や花火と同じくらい、夏を代表するものなんだ」
梅雨が明けた7月中旬、朝になれば蝉の大合唱が始まる。季節は、夏の始まりだった。
「それなのに、僕はまだ幽霊に会ったことがないんだ。これほど知名度が高く、テレビでもたくさん特集されてたりするのに、会えないなんて変じゃないか。だから今日は是非会って、幽霊で夏を感じてみたいんだよ」
「池手名さん、ここ、ほんとに出るらしいですよ。だから、心の準備はしっかりしておいてくださいね。きみたちもね」
山本は女性2人にも優しく言った。
「はい!」
と元気よくみさきが答える。
「山本さん、私怖いです」
とゆりこ。2人は対照的な性格だった。
「大丈夫だよ、危なくなったら逃げればいい。それに、池手名さんもいるんだ。いざとなったら池手名さんが守ってくれるよ。ね、池手名さん」
「もちろんだ。女性を守る為に生まれてきたような男だからね」
おそらく神はいぞうにそんな使命を課してはいないが、そう信じて疑わないのがこの男の凄いところである。
「さあ、行きましょうか」
山本が先頭に立ち歩きはじめる、そして3人がその後についていく。ほどなくして4人の姿が病院の中に消えていった。
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