2.廃墟病院へ

2/2
前へ
/16ページ
次へ
いぞう達は、『夏といえば心霊スポット!』という山本の提案で、肝試しに来ていた。 メンバーは会社仲間。提案者の山本、その先輩であるいぞう。そして、同じ開発部に所属する若い女性二人、工藤みさきと竹野ゆりこだった。 「しかし、意外でした。池手名さんが幽霊に興味あるなんて」 「当然あるよ。幽霊といえば、夏の風物詩と言っても過言ではない。僕の中で幽霊は海や花火と同じくらい、夏を代表するものなんだ」 梅雨が明けた7月中旬、朝になれば蝉の大合唱が始まる。季節は、夏の始まりだった。 「それなのに、僕はまだ幽霊に会ったことがないんだ。これほど知名度が高く、テレビでもたくさん特集されてたりするのに、会えないなんて変じゃないか。だから今日は是非会って、幽霊で夏を感じてみたいんだよ」 「池手名さん、ここ、ほんとに出るらしいですよ。だから、心の準備はしっかりしておいてくださいね。きみたちもね」 山本は女性2人にも優しく言った。 「はい!」 と元気よくみさきが答える。 「山本さん、私怖いです」 とゆりこ。2人は対照的な性格だった。 「大丈夫だよ、危なくなったら逃げればいい。それに、池手名さんもいるんだ。いざとなったら池手名さんが守ってくれるよ。ね、池手名さん」 「もちろんだ。女性を守る為に生まれてきたような男だからね」 おそらく神はいぞうにそんな使命を課してはいないが、そう信じて疑わないのがこの男の凄いところである。 「さあ、行きましょうか」 山本が先頭に立ち歩きはじめる、そして3人がその後についていく。ほどなくして4人の姿が病院の中に消えていった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加