不思議な猫

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 今日は地元の夏の大イベント、花火大会。彼氏の直樹と付き合い始めて、初めての花火大会を私、菜々と直樹はずっと前から楽しみにしていた。  二人で一緒に浴衣も買ったし、準備は万端だった。それなのに──……  当日、私の携帯が直樹専用の着信音を鳴らせた。今日の待ち合わせの時間だろうか?菜々は「もしもし」と明るい声で電話に出た。  それに対して直樹の声色は何故か暗かった。「ごめん。今日の花火大会行けなくなった……バイトでどうしても人手が足りなくて……本当にごめん。今度埋め合わせするから!」そう言って電話が途切れた。  菜々は放心状態になり、壁に掛けていた浴衣を涙目で見つめた。 そんな時だった、カツンカツンと窓を叩く音が聞こえたのだ。振り向いて見るとそこには真っ黒な黒猫が菜々の部屋の窓を爪で叩いているではないか。  菜々は部屋の窓を開けた。猫は人懐っこく、簡単に菜々に頭を撫でられた。猫はそのまま菜々の部屋に入り、壁に掛けている浴衣に近づきクンクンと匂いを嗅ぎ、前足でパサパサと浴衣を揺らした。
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