浮遊城の水盆

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「もう荷物はありませんか?」 周太郎が用意した石を送りながら、冬弥に聞かれたので、自分はないと那智を見ると、「俺達も無い」との事だったので、一旦広間へと戻る。 「父上……その風呂敷包何です?もう送りませんよ?」 「自分で持っていくからいい。軽いものだし気にするな」 「お爺ちゃん、括ってあるところから、くまさんの足が見えるのは僕だけ?」 「侑弥の玩具じゃ!」 「あっちにもありますよ?置いていったらどうです?」 「早う言わんか!」 そう言って使用人に元に戻してくるようにと押し付け、座布団に座ったのはいいものの、「冬弥、説明がまだじゃの?」と言う姿は貫禄がある。 「聞いてると思いますが、また九堂のような奴が出てきたのであれば、雪翔もそうですが、航平も危ないかもと思ったんです。ほら、二人とも我々の力を半分入れましたからねぇ。で、春休みの残り20日ほど、不便でしょうけど浮遊城に匿いたいと思います。あ、雪翔、文句は後で聞きますからね?」 「休みだからいいんだけど……航平ちゃんは?」 「俺も平気」 「なら良かったです。航平の物や人探しはかなりの腕前です。浮遊城の水盆から探って貰いたいのと、雪翔は貰った本を四郎と解読すること。三郎と周太郎は雪翔と航平に別れて護衛を。浮遊城だからと言って絶対安全とは限りません」 「空にあるのに?」 「例えばですが、私が遠見法をしたとしましょう。私ならばその水盆からでも入れます。もしも術者が力の強いものならば、浮遊城だろうがどこだろうが来ます。九堂も蛇の姿でこの国に来たでしょう?それの強力バージョンです。でなければ、この国で雪翔が泣きつく訳ありませんからねぇ」 「僕、泣いてないから!」
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