浮遊城の水盆

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那智と夏樹の喧嘩が始まる前にと、辞書を二つに分けて置き、日本の言葉であろうものから書き出していく。 四郎といつものように、半分ずつに別れてやっていると、タイトルの後の文が少しずつ出てくるが、何だかかなり古い読み物と言うよりは日記のようにさえ思える書き方だった。 「なになに?『狐と知りながらそばに置いてくれた』と言うのは何じゃ?それに、『滅されていくもの』とか物騒じゃのぅ」 「もー、お爺ちゃん覗くなら手伝ってよー」 「坊ちゃん、五十音の表を書き出しました。抜けているところもありますがこれで解読しやすいかと」 「流石!」 「夏樹様方の分も書いておきましたので、他のも作りましょうか?」 「お願いできる?那智さん達後ろでうるさいし」 「俺も手伝うよ。イギリスの言葉の分はやってみるから、狐の国のを四郎さんに任せたらどうかな?」 「いいの?」 「勿論。今日は水盆には行かないみたいだし」と航平が愚図る侑弥に格闘する冬弥と栞を見て笑っているので、こちらはこちらでやろうと思いつつ、「那智さんうるさい!侑弥が寝ないじゃん!」と言うと「すまん」と兄弟二人が静かにしてくれたので、文字にわかる部分を当て嵌めていく。
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