思い出

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後部座席で少年は、一人憂鬱な気持ちで窓の景色を眺めていた。 少年の気持ちとは裏腹に、空はどこまでも青く潔く清清しい。 母の実家は、海が近くにあること以外は特になにもなく、少年にとっては退屈な場所だ。 小さな商店、簡易郵便局、人気のないガソリンスタンド。 小川にかかる橋を渡ると、神社に突き当たる。そこを右に曲がると海に出るが、車は左に折れ、実家のある集落へと向かう。 昼過ぎに実家につくと、祖父母は笑顔で迎えてくれた。 しかし、少年はその笑顔の裏にある姉への思いを感じ取っていた。 チクリと胸が痛むが、努めて明るく振る舞い、自分の気持ちを圧し殺す。 今年もまた無機質な夏が始まると思っていた。
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