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食事が始まるなり、6歳のスバルが箸に刺して掲げたコロッケが床に落ちた。
なぜコロッケを掲げる必要があったのか、男子の思考はよくわからない。みんな同じものがお皿にあるんだから、見せびらかす必要もないのに。
スバルは拾ったコロッケをテーブルの上に置いて、じんわり涙を浮かべている。お皿には千切りキャベツだけが小山のようにある。
ちょっとかわいそうになって私のをあげようとしたら、ベテランリーダーの京さんにダメだって言われた。
「自分のしたことは自分が責任を取る。スバル、おかずないからご飯とキャベツ食べなさい。落としたコロッケ食べるなよ!お腹痛くなるぞ」
冷たく言って自分の女子チームに戻って行った。
男子チームは一瞬静かになる。でもすぐに喧騒は戻ってくる。
シュンとしたスバルが気になってチラチラ見ていたら、隣にいた10歳タケルくんが自分のコロッケを4つに分けて、ひとつをスバルのお皿に黙っていれた。
と、反対の隣にいた8歳ユウくんも真似るように同じことをした。彼も黙っている。
スバルは目をぱちくりしてから、小さな声で
「ありがとう」
と言ってひとつを口に入れる。
やるな、10歳。
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