あの夏

3/17
前へ
/19ページ
次へ
◆ 離島に向かう船の中で、私の周りには8歳~10歳のオマセ女子たちが集っている。 「ねえカナタくん、彼女おる?」 オマセの代表が話しかけてくる。 「いないよ」 なんとなくわかって答えた。 身長167センチ、ひょろりとした体格、ショートカットにバンT。多分よくある勘違いをしている。おもしろいから勘違いにノッてみる。 「えぇ~、大学生やのにあかんやん。雫ちゃんにしとき、めっちゃかわいいやん!」 「うん、かわいいなあ」 オマセちゃんには水着になるまで黙っていよう。 島について、水着になった私の耳元でオマセちゃんは 「嘘つき」 と囁いた。10歳にしてその色っぽさ、分けてほしいと思いながら男子チームへ行く。 「カナター、オンナやったんか!」 9歳男子に言われた。 海を前に水着に着替えた男子たちは元気だ。グループリーダーの指示に最初だけ従い、海に飛び込んでいく。 アシスタントリーダーの役目は、海に入らずに浜から子供たちを見ること。目の前に気持ちよさそうな海があるのに、水着の上にTシャツと短パンで浜をうろうろするのはなかなか拷問チック。太陽は容赦なく照りつける。 「カナタ~!」 叫んだ小3男子にビーチボールを後頭部からぶつけられる。 「カナタ~、一緒に泳ごう」 生まれて初めて海に誘ってくれたのが6歳児になった。     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加