空飛ぶ猫

2/42
前へ
/161ページ
次へ
 なにも見えない。  すぐ隣にいるトラちゃんの強面さえ判然としない。驚きすぎて固唾ごと飴玉を飲みこんでしまったじゃないか。 「こりゃあ停電だな」 「トラちゃん、あんまり驚いてないね」 「そんなことないぞ。目が慣れるまで待つしかねえな」  夜の頂には月がうっすらと雲を透して浮かんでいる。星と月の明かりが頼もしく感じるなんて初めての体験だ……。  とにかく非常事態である。最寄りのコンビニまで小走りに向かうことにした。この時間帯なら姉上の友達がバイト中のはずだ。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加