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食卓で、テーブルを挟んで食べている篤彦に、美代がハンバーグを一口サイズに切り、箸を使って食べさせようとする。あーんと、美代は甘えた声を出す。
篤彦は、口を開け、美代が差し出したハンバーグを口に入れる。
篤彦は、同じように、ハンバーグを切り、箸を使って、美代の前に差し出す。
「さあ、母さんも」
思わず、美代を代名詞で呼んでしまい、篤彦は口を噤んだ。美代が責めるように睨む。いけない。もう俺達は親子ではなく、恋人なんだ。
篤彦は、かつては母親であり、今は恋人の美代に、ハンバーグを食べさせた。そして、お互い、微笑み合う。心の底から、愛おしさと暖かさが込み上げてくる。
さあ、食事を終えたら、解体に戻ろう。もう暑い夏は来てしまった。妻であった『沙織』が腐敗する前に、片付けてしまおう。美代とこれから幸せに暮らすために、この困難を乗り越えよう。俺達は負けない。
篤彦は、決心した。
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