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 残りの手足のことを考える。  始めから鉈を使うことも考慮に入れたが、鉈は遠心力がないと機能しない。そのため振りかぶる必要があった。そうなると、同じ場所に何度もピンポイントで叩きつけることが困難で、『それ』の体をひどく痛める危険性があった。おまけに、振りがぶって叩きつける動作により、周囲に肉片や血を撒き散らす恐れもある。それは避けなければならない状況だった。  ここはやはり、先ほどと同じように、骨スキナイフと鉈のコンビでいくしかなかった。  篤彦は、再び作業に取りかかった。    『それ』の四肢を全て切断し、切り落とした手足の先も分離させる。この分離させた手足の先は、後ほど細かく砕く必要があった。  一通り作業が一段落し、篤彦は、ホッと息を吐いた。目の前の『それ』に目を向ける。  腹が抜かれた、皮のない胴体のみの物体だ。こう見ると、生肉工場で、これから加工される動物の肉と何ら変わりがない。原型がある間はおぞましさがあったが、こうなると、何も感じなくなるのは、不思議なものである。     
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