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新納篤彦は、自宅にあるガレージに入った。その途端、粘つくような熱気が全身を包み、つい顔をしかめる。  この熱気は、八月に入り、急激に気温が上がったせいで発生しているものだ。行楽真っ盛りの夏が来たとは言え、今年は異様な気候が続いていた。まるで、日本全土が熱帯化したかのような状況だった。  このガレージには、空調設備がない。そのため、溜め込んだ熱を外に放出できず、温室のような環境になっているのだ。  本来は、ここに車が置いてあるはずだったが、理由があって、車は外に出している。いくら温室化しているとは言え、外の直射日光に比べれば、ここの方が、まだ車は熱を持たない。にも関わらず、外に出しておく必要があった。  その原因が、ガレージの中央に見える。  篤彦は、『それ』に近付く。『それ』は、天井から伸びたロープによって、吊り下げられていた。ロープは、天井に打ち付けられた杭によって支えられている。そして、真下には、大きな金ダライと、ビニールシートが敷かれてあった。この作業を行うだけで、滝のように汗が流れ、脱水症状を起こしかけてしまった。それで、先ほどまで、自宅にて休んでいたのだ。     
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