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もう忘れかけていたユカと再会するのは、ポールが来日する少し前のことだった。
といっても、出会ったのは僕ではない。
一緒に旅をした大学院生の友人が、たまたま帰郷したとき、京都駅で偶然ユカと出会ったというのだ。
彼女は大学を卒業して京都駅の近くで働いていた。
僕たちは彼女の顔を忘れていたが、彼女のカメラには僕たちの写真が収まっていたらしく、友人の顔を見てすぐにわかったという。
僕も友人もおしゃれな方ではなかったので、当時とあまり変わらない姿形をしていたから、わかりやすかったのかもしれない。
友人から携帯に「あのユカちゃんに出会った」とメールが送られてきた。
家に帰ると、パソコンに彼女の名前だけが入ったメールが届いていた。僕のアドレスは当時と変わっていなかったからだ。
今度は携帯アドレスなどを交換して、トントン拍子に話が進み、彼女と僕たちは久々に出会い、一緒に飲もうという話になった。
数年ぶりに会う彼女は綺麗になっていた。
僕と友人は量販店で買ったような服とボロボロのリュックを背負っていて、はっきり言ってダサいままだったのだが、彼女は高級ブランド品を身に着け、そして、それが似合う女性になっていたのだ。
彼女は僕たちを見てガッカリしているかな……
それとも変わらない僕たちを見て、昔を思い出しただろうか……
なんだか申し訳ない気持ちになったのを覚えている。
またの再会を誓って、その日は別れた。
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