マイ・ラヴ

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話はポール・マッカートニーコンサートに戻る。 数十年ぶりに来日したポールはビートルズ時代の曲をふんだんにセットリストに取り入れ、ファンを熱狂させていた。 タイムリーな世代だったはずの50代とおぼしきおじさん、おばさんたちが総立ちになり、若者時代に戻って飛び跳ねていたのが印象的だった。 僕とユカも同じように熱狂の渦の中にいた。 「ポールはヘイ・ジュードを歌う前に期待を煽っておいて、わざと違う曲を歌ったりするんだよ」 「今、ウクレレで歌っているのはジョージ・ハリソンの曲なんだよ」 「今回、イエスタディを演奏するギターはポールがイエスタディを作ったときのギターなんだ」 僕はありったけのビートルズ知識を駆使してユカに説明した。 彼女がどこまで関心を持ってくれていたかわからないが、興味深げに聞いていてくれたように思えた。 「ポールさんって、左利きだったのですね」なんて、はずんだ声で応えてもくれた。 すべての曲が素敵だったが、僕がとりわけ感動したのが、「マイ・ラヴ」だった。 この場合は所有格として「私の大事な人」という形に訳される。 ポールが最愛の奥さんリンダに送った曲で、以心伝心で何事も伝わるほどの愛すべき存在のことを歌っている。     
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