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もしも山田君が飛べるようになったなら
校庭のトラックには二色のラインが引かれる。
白いラインは、リレーや短距離走などの時のためのもの。
もうひとつ、青いラインがある。これは、低学年の子たちの、飛行訓練に使う。
白いラインを区切るように、一定の距離をあけて引かれる青いライン。これは、踏切の目印。
逆上がりをしたり、跳び箱をしたりするように、飛行の授業がある。一年生たちは体育の時間、白いラインに沿って走り、青いラインで踏み切って「飛ぶ」ことを教えられる。できる子は、小学校に入学する前からいとも簡単に飛ぶことを覚えてしまう。青いラインなんか、意識すらしないのだ。
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飛行が上手いひとほど、人気者。
すうっと大きく円を描いたり、気の合うひと同士でダイナミックなダンスを踊ったり。
電線に触れるか触れないかの際どさで、余裕の笑みを浮かべて飛ぶひとたち。自分たちの楽しみ以外、何も目に入らなくなるほど飛行は楽しい。
先生たちや親たちは、飛ぶ時は、電線に触れない位置でまっすぐ飛びなさいと口うるさい。でも、そんな注意など誰も守らない。
カッコイイとされる子たちはみんな、ハラハラするような飛び方を楽しんでいる。
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