もしも山田君が飛べるようになったなら

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 とてもスリリングで楽しそうで、登下校の時に思わず足を止めて見入ってしまう。  女の子も、勝気で活発なグループは男子に混じって飛ぶ。大胆な飛び方をする子は人気があるし、モテた。  子供は飛べて当たり前。  飛べないなんて、自転車に乗れないのと同じレベルだ。  小学校低学年の体育の時間で「飛ぶ」ことを教育されるけれど、だいたいの子は学校の授業で教えてもらうより早く、好き勝手に飛ぶ。青いラインで踏み切って、お尻を上げるようにして飛ぶように指導されるけれど、みんな感覚として分かっている。どうしたら飛べるかなんて、テキストで教えられる以前に、体が知っているのだった。  しかし、中には一生懸命助走しても、青いラインで飛び上がれずに顔面から地面に倒れ込み、鼻血を出す子もいる。  同じクラスの山田君は、本当にニブくて可哀そうなくらい。男子たちからは馬鹿にされている。女子たちからは、キモイと言われている。だけどわたしは、そんなに山田君が嫌いではない。  忘れ物をした時、山田君は快くなんでも貸してくれた。飛ぶことはできないけれど、毎日宿題は必ずしてくる。お掃除も丁寧だ。コツコツ努力型の性格なのだと思う。お調子者よりも、よっぽど良い性格だとわたしは思う。     
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