もしも山田君が飛べるようになったなら

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 活発な女子グループは、怖かった。わたしたちは二人とも飛べたけれど、端っこでそうっと飛んで楽しんでいれば十分だった。そりゃあカッコヨク飛ぶ男の子は素敵だけど、恐れ多くて近づけない。下手に近づいたら、怖い女の子グループに目を付けられてしまう。  笛の音と、先生の大きな声が聞こえる。  ちらっと校庭を見ると、土塗れになった山田君が顔を拭いながら立ち上がったところだった。  あちこち傷だらけになって、まだ飛べない山田君。学年で唯一飛べない子、山田君。  「飛べなくたって、君には他の人にはない取り柄があるぞ」  と、先生が言っているのが聞こえた。  まーちゃんが足を止めたので、わたしも立ち止まった。まーちゃんが真剣な目で、校庭を見ていた。  山田君は泣いていた。先生に肩を抱かれている。何か話をされているけれど、頑として首を縦に振らない。山田君の大きな声が聞こえて来た。  「だけど僕は飛びたい。どうしても飛びたいんです」  だからまだやります。  青い踏切線で思い切りよく踏み切って、お尻を持ち上げるようにして、目線は青い空に向ける。空に吸い込まれてゆくつもりで飛び上がる。分かっているんです。テキストの内容も暗記しているんです。飛びたい。僕は飛びたいんです。 **  (もし山田君が飛べるようになったら、青い空ばかりに気持ちが集中して、地面なんか見なくなって、歩いているおばあちゃんを助けることは、もうしなくなるのかな)     
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