もしも山田君が飛べるようになったなら

6/6
前へ
/6ページ
次へ
 青いラインを踏む、白いソックスを履いた山田君の靴。  いつも正確にラインを踏むのに。きっと彼は、青い色に集中して、空に吸い込まれる覚悟もできているはずなのに。  飛びたい。みんなと同じように。どうして僕だけが飛べないんだろう。  飛べなくても他に取り柄があると言われても、そんな取り柄なんか僕はいらない。僕はただ、飛びたい。みんなが普通にしていることを、僕もできるようになりたいだけなのに。  ピッ。はい、青い線で踏み切ってー。  ピッ。もう一回、はい、青い線だけを見て走ってー。    えんえんと繰り返す特訓の笛の音の中に、飛びたい飛びたいという、山田君の叫びが混じったような気がした。    ふっと隣を見ると、まーちゃんが目をキラキラさせていた。  「山田君、なんかカッコイイな」  まーちゃんは、こっそりと言った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加