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南の夏空はとこしへに
じりじりと暑い陽光に翼を照らされながら飛んでいく。
あの鳥はどこへ行くのだろうか。
あの鳥の中にはどれだけの人達の喜怒哀楽が、感情が詰まっているのだろうか。
そう考えると、無機質に写る鳥は、私なんかよりよほど人間的でいて、価値ある存在に思えた。
鳥を見てそんな風に思うのは、私が所詮、自分一個分しか背負えない人間だから。
いや、もう自分一人も背負えていないか。
昔からこの世界は嫌いだった。
だって、ここには溌剌とした感情がないから。
いつだって怠惰で、カロリーがないから。
匂いだって嫌い。
だって、この匂いもまた、感情をもっていないから。
たぶん、この匂いはそんな無機質な世界を構成する、重要な一因子なんだと思う。
鼻孔の奥を刺激するこの「匂い」と形容される何かは、余りにも無機的でいる。
だから常々、私は感じていた。
彼らの意思を。
彼らが私の生きるための生体反応を、身体を維持するための熱産生を否定している事を。
良くわからないけど、たぶん、彼らにとって私はこの世界には似合っていないのだ。
だから、私ははやく行ったほうが良いんだ。
私の調子はいつも悪い。
元々、私の世界に調子の良い人は少ないのだけれど。
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