16.奇跡の一日

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帰り道を遠回りして、センセイは車を走らせていた。途中、コンビニに寄って、夜ご飯にと飲み物とパンをいくつか買った。 車は、そのまま山道を進んで行く。 車内はまだ、沈黙のままだった。 何か話題はないかと、頭の引き出しを開けてみたけど、入っているのは どう告白を切り出すか? だけだった。 「着いた」 しばらく登っていき、とある駐車場に車を停めてセンセイが呟く。 そこは山の頂上近くの、展望台だった。 辺りは少し暗くなり始めている。夜になったら夜景が綺麗だろうな、と思った。 「ここ私のお気に入りなんだ。なんか1人になりたい時とか、悩み事ある時よく来てたの」 「すげっ。風が気持ちいいっすね~!いいんですか?今日は1人じゃないですよ?」 「あはは。いいの。まだお腹すいてないね。飲み物だけ持って、あそこ座ろうか」 展望台の外のテラスには、ワンコインで覗ける望遠鏡が置いてあって、その前のベンチに座り、景色を眺めていた。 座ると、センセイはいきなりとんでもないことを言った。 「…え?」 「だから…私、お見合いすることになったの」 その一瞬だけ、確かに時間が止まった。
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