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帰り道を遠回りして、センセイは車を走らせていた。途中、コンビニに寄って、夜ご飯にと飲み物とパンをいくつか買った。
車は、そのまま山道を進んで行く。
車内はまだ、沈黙のままだった。
何か話題はないかと、頭の引き出しを開けてみたけど、入っているのは
どう告白を切り出すか?
だけだった。
「着いた」
しばらく登っていき、とある駐車場に車を停めてセンセイが呟く。
そこは山の頂上近くの、展望台だった。
辺りは少し暗くなり始めている。夜になったら夜景が綺麗だろうな、と思った。
「ここ私のお気に入りなんだ。なんか1人になりたい時とか、悩み事ある時よく来てたの」
「すげっ。風が気持ちいいっすね~!いいんですか?今日は1人じゃないですよ?」
「あはは。いいの。まだお腹すいてないね。飲み物だけ持って、あそこ座ろうか」
展望台の外のテラスには、ワンコインで覗ける望遠鏡が置いてあって、その前のベンチに座り、景色を眺めていた。
座ると、センセイはいきなりとんでもないことを言った。
「…え?」
「だから…私、お見合いすることになったの」
その一瞬だけ、確かに時間が止まった。
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