91人が本棚に入れています
本棚に追加
/271ページ
センパイはもう近くまで来ていて、すぐ合流することができた。
「あのおっさん、完全にのびてたよ。いいの食らったみたい」
「へぇ」
俺はさほど興味なさげに返事をする。内心、そのまま死ねばよかったのに、と物騒なことを考えていた。
「ビックリしちゃった。急に走って行って、そのあとすぐK.O.しちゃうんだもん」
「すいません。センパイのこと考えてませんでした」
「ううん。なんかカッコ良かったよ。あーあ。もう少し前にキミに会いたかったなぁ」
「何すかそれ。それにもう少し前とか、俺、中学生だったかもしれないすよ?」
「愛に年齢は関係ないんだよ。うわーでもやっちゃったね?少年」
「後悔は全くしてないです」
「まぁ…夏休みだし、しばらく学校行かないにしても、先生を殴ったのはまずかったんじゃない?」
「大丈夫です。ちゃんと保険かけたんで」
「保険?」
「それにアレ止めないとか、あり得ないっすよ」
「もっと他に方法あったと思うけど、カッコ良かったからよし」
「何すかそれ」
センパイはすっかり酔いが冷めたらしく、タクシーじゃなくて電車で帰って行った。最後まで俺の部屋に行くとか言ってたけど、無視を決め込んだ。
この時、
この事件がきっかけで、俺の人生、というか高校人生が決まってしまったのである。
そして夏休みだからと安心していて、すっかり忘れていた。
8月頭には、登校日なるものがあることを。
最初のコメントを投稿しよう!