2.花火のあとで

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センパイはもう近くまで来ていて、すぐ合流することができた。 「あのおっさん、完全にのびてたよ。いいの食らったみたい」 「へぇ」 俺はさほど興味なさげに返事をする。内心、そのまま死ねばよかったのに、と物騒なことを考えていた。 「ビックリしちゃった。急に走って行って、そのあとすぐK.O.しちゃうんだもん」 「すいません。センパイのこと考えてませんでした」 「ううん。なんかカッコ良かったよ。あーあ。もう少し前にキミに会いたかったなぁ」 「何すかそれ。それにもう少し前とか、俺、中学生だったかもしれないすよ?」 「愛に年齢は関係ないんだよ。うわーでもやっちゃったね?少年」 「後悔は全くしてないです」 「まぁ…夏休みだし、しばらく学校行かないにしても、先生を殴ったのはまずかったんじゃない?」 「大丈夫です。ちゃんと保険かけたんで」 「保険?」 「それにアレ止めないとか、あり得ないっすよ」 「もっと他に方法あったと思うけど、カッコ良かったからよし」 「何すかそれ」 センパイはすっかり酔いが冷めたらしく、タクシーじゃなくて電車で帰って行った。最後まで俺の部屋に行くとか言ってたけど、無視を決め込んだ。 この時、 この事件がきっかけで、俺の人生、というか高校人生が決まってしまったのである。 そして夏休みだからと安心していて、すっかり忘れていた。 8月頭には、登校日なるものがあることを。
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