90人が本棚に入れています
本棚に追加
/271ページ
「お相手の女性は知り合いですか?奥様ではないようですが…」
「い…いや…それは」
あ、まずいな…。俺のしたことはもうお咎めなしみたいだけど、センセイのことは遅かれ早かれバレそうだ。
どうしたらごまかせる…?ダメだ。何も浮かばねぇ…。
ガララララ…
「私です」
急にドアが開いて、男3人は声がした方を見た。
「センセイ…?」
南センセイが立っていた。もしかしてずっと聞き耳たてていた?
「え…えっと南先生?」
軍曹も驚いた顔をしている。
「実は数週間前から長岡先生には仕事の相談をしてもらってました。でも先生には奥様もお子さんもいます。だから”そういうこと”はお断りしていたんですが…」
強ぇぇな…センセイは…。
凛とした覚悟をした目で、軍曹に事の経緯を説明している。バカ岡は観念したのか、黙ってセンセイの話を聞いていた。
「あと前川くん」
「ん?はい」
「あの時はありがとうございました」
「え…いえ」
ぼーっとセンセイのことを見ていたら、急にこっちに体を向けて頭を下げた。
「あとごめんなさい。本来なら事情を武藤先生なりに報告して、真っ先にキミにお礼を言わないといけなかったのに、逆に迷惑をかけてしまって…。教師失格だよね…?本当にごめんなさい」
「え!?いいっすよ!!全然気にしないでください!!」
「ごめんなさい…」
センセイは頭を下げたまま起こさなくなってしまった。
しばらくその場が静まりかえっていたが、軍曹が
「あとは3人で話合う。よく南先生を助けてくれたな。でも次からは通報するなり、誰かに助けを求めるなりしろよ?」
「うす」
「今日は悪かった。また休み明け会おう」
そう言って俺は解放された。センセイは最後まで頭を下げたままだった。
最初のコメントを投稿しよう!