魔族の寵愛

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散々泣いて乱れたラファエルが4度目の絶頂を迎えて気を失うと、魔族はそっと2階の突き当りの部屋に向かった。 天蓋付きの大きなベッドに、ラファエルの兄が眠っている。 彼に会うのはずいぶんと久しぶりだ。 「ほら、薬だ」 小さなクリスタルの瓶からほんの一滴、魔族は兄の口元に何かを垂らした。 唇に受けたその刺激に、兄が目を開いた。 焦点の合わない目で兄は魔族の姿を探す。 どうにか身を起こそうともがくが、枕からほんの数センチ上がったところでまた首が落ちてしまう。 「お前、よくも俺をこんな目に遭わせたな?」 「何をいう。起き上がれるまでに回復しただろう?」 3ヵ月前までまったく寝たきりだった彼が、今では起き上がれるようになったのは事実だ。 「お前がこんな病にさせて、回復させたもないだろう」 恨みがましい眼で睨んでも、魔族は涼しげに微笑むだけだ。 「そうだったか?」 彼は冷たく答えて、長く伸びた爪の先で兄の痩せた頬をなぞった。 「これ以上の回復などしないが、しもべでいる限りは生かしておいてやる」 「こんな約束じゃ、なかったはずだ」 「自分よりも賢く美しい弟が目障りだと言ったのはお前だろう?」 「俺は…、ただ、俺の目の前から消してくれと言ったはずだ」
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