魔族の寵愛

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「兄はもう3ヵ月も寝たきりなのです。本当に助けられますか?」 「ああ。我に不可能なことなどない」 天使よりも悪魔のほうがきっと美しい生き物だ。 彼に出会って、ラファエルはそう思うようになった。 そうでなければ、魔族の手に堕ちる人間がこんなにも多いわけがない。 いまだに名前も知らないが、彼は律義に週に数回、屋敷へやってきてラファエルを抱く。 どんな術が施されるのか、その間、ラファエルがどんなに泣いても叫んでも、絶対に誰も部屋にはやって来ない。 隣りの部屋に控えているはずの、ラファエル付きのメイドはもちろん、屋敷の警備に立っているはずの夜警でさえも。 きっとこのまま、魔族が飽きてしまうまで体を貪られるのだろう。 あるいは魂まで食われてしまうのかもしれない。 そう考えると、ラファエルは絶望的な気持ちになる。 こんなことがいつまで続くのだろうと考えて不安になる夜もある。 あるいは時おり、怖くなることもある。 怖いのは魔族と取引きしたことではない。 ラファエルが怖いのは、自分が自分を保っていられるのかということだった。 このまま魔族に取りこまれて、自分も魔族になってしまうんだろうか? 魔族の淫らな性はまだ16歳のラファエルには想像もできなかったほどの淫蕩ぶりで、彼に抱かれている間、あまりの快楽に意識を失うこともたびたびだった。
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