第2章

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「ぼくは…つぼみ。花の蕾の字だよ」  ぼくの名前を聞いたら、どう感じるだろう? 男として生まれたはずなのに、なぜか両親はぼくにこんな女のような名前をつけた。まるで、性別がひっくり返るのを見込んだように…。花開く前の蕾…、恥ずかしい。 「なんで、死のうとしたの?」  希理は名前には一切触れず、いきなり核心をついてきた。そんなにぼくに興味があるの? 「さぁ…。なんでかねぇ」  もったいぶってみる。期待しても突き落とされるなら、もう誰も好きになんかなりたくない。怖気づいたぼくが階段を降り始めると、希理が今度はぼくの手を掴んで先頭に飛び出した。  一瞬、階段から落ちそうになる。ゾワゾワとドキドキが交じり合って、心臓が煩い。 「なにすんの? 危ないじゃん!」  思わず抗議したら、希理はすごく素敵な顔つきで、「どうせ捨てる命拾ったんだ、俺達。ついでだし、ちょっと付き合えよ」 そう言って、ぼくの手を引いて前を歩き出した。
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