第2章

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「なんで男の胸触ってんの?」 「先に触ってきたからだよ」  ぼくは希理の身体を撫でまわした。  見た目よりもずっと筋肉質で男らしい身体。半陰陽じゃなかったら、ぼくもこんな身体になっていたんだろうか?  まだぼくの胸を包む彼の手が、指が強く握ろうとしていることは感じていた。落ちるまで、あとどれぐらいかな? 「希理の心臓、激しいな」 「は、激しい?」 「すごく力強くて、良い」  真っすぐに目を見て、ぼくはとどめを刺す。 「お互い死ななくて良かったよ。死んだら、こうして希理に触れられなかったから」  驚いた顔。――― 死に急いだ君ならわかるよね?  ぼくたちの出会いは、きっと運命なんだ。だから、今からぼくに抱かれなよ……。  固まった彼に抱き着いた。胸と胸がくっつくぐらいに密着する。鼓動が早くなって、体温が上がっていく……。  希理は遠慮がちだけどぼくの背中に腕を回してきた。そしてぼくのうなじと髪に鼻をつけて息を吸い込んだ。ぼくの匂いを感じた彼は力を込めて、ぼくを抱きしめてくる。嬉しくて、何かが胸いっぱいに込み上げてきた。 「大人に酷い目に遭わされて傷だらけ……。それならぼくも同じだ。一時間。迷って迷って結局飛び降りなかった……。本当なら死んでたはずなのに、希理がやって来てくれて良かったよ。どうやってあの場から帰ればいいかわからなくて困ってたんだ」  ぼくの話も教えてあげる。死ぬほど苦しかった気持ちを、希理になら見せられる。
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