第2章

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 服が乳首に擦れるだけで敏感になっている。さっきからアソコも濡れて、もういつ始まっても準備はできている。希理に抱かれたい。キスしたい。ぼくに溺れて欲しい。 「ぼくはもう綺麗じゃない。綺麗なまま生きられない自分を今日、受け入れたばかりだけど……。売れるものがあるなら、身体を売ってでも自分の力で生きていく。野垂れ死ぬまで悪足掻きしてみるさ」  言ってる自分が混乱するぐらいのくだらない屁理屈だった。でも、希理は揺れていた。 「金のために身体を売るな。金ならあるんだ。俺がお前をかくまってやるから……」  希理はぼくを押し倒して、腕を突っ張って顔を覗き込んできた。窓からの光を覆い隠す男の顔をした希理は、潤んだ瞳でぼくを見下ろしていた。まるで天の川のように煌めく星屑のような輝きに見惚れ、吸い込まれそうになる。 「希理の両親はお金持ちなんだな」 「そう。金はあるけど愛がない……」 「愛……か……。うちは金も愛もなかったな」  うちは琥珀の家族の付属品だ。実際に金を持っているのは本家の血筋の者達で、ぼくらは彼らにかしずく弱い者だった。バレエの才能も、分家の子供には現れない。ぼくが役立たずだから、本家からの支援もすぐになくなって両親は不仲になった。二人は恋愛結婚なのに出来損ないのぼくのせいで冷え切った夫婦になってしまった。  希理が、嫌なこと全部消してくれるのだと勘違いしそうになる。真剣な彼の頬を撫でてそのままキスしたくて、手を伸ばす。 「……希理は、愛が欲しい?」
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