第2章

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 そしてぼくは、怯えながらも希理に半陰陽について自分の身に起きたことを説明した。希理は黙って最後まで聞いてくれたけれど、半信半疑の顔をしながら「よくわかんないけど、蕾は俺から見たらちゃんと女だ」と言った。  何気ない言葉だったけど、ぼくは―――私はこの瞬間、自分は女なのだと実感した。  私を生まれ変わらせてくれる希理という男の存在に、この時救われたのだと思う。 「ありがとう。気持ち悪くない?」 「まったく。むしろ、蕾のこともっと知りたいって思った」  希理はそう言うと、キスしてきた。目を閉じるのが勿体なくて、彼も私をうっとりと見つめている。私のことを知りたいという彼の好意が嬉しくて……。 「ぼ…くの、なにが知りたい?」 「キスしたいって思うのは……、好きなんだよな?」 「そうだね。私も好きじゃなきゃキスなんてしない」  希理の真っすぐな言葉が私を溶かし始める。こんな魅力的な男の子が、私をちゃんと女だと言って求めてくれるなんて、嬉しすぎてよくわからなくなる。辛いときも、嬉しいときも、度を越えたらみんな、よくわからなくなる……。  年齢とか性別とか育ちとか能力とか。私たちの存在価値を評価する数字や記号なんていらない。 「神様がくれた誕生日プレゼントが蕾なんだって思ってるよ」  なんだって? 私のことがそんなに好きなの?   嬉しさが私の全身に広がって、希理に触れられるあらゆる場所に甘く切ない疼きを覚えた。吐息がかかるだけでも蕩けてしまいそうになる。
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