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ネコがニャーと鳴く
※多分まだ付き合ってない時系列だと思います。
斎藤君がバイトの日は行先が同じなので一緒に帰る。
彼はあまりスマートフォンを見たりしないから、二人でゆっくり歩きながら話をした。
僕は会話の幅が狭いから、その日学校であったことを話す事しかできないのに、斎藤君は嫌がるそぶりも見せず聞いてくれる。
同じクラスなんだからほとんど斎藤君も知っているのだ。それでも時々あいの手を入れながら聞き役に回ってくれる。
僕はこの二人の下校の時間がとても好きだった。
ふと、横に立つ塀を見ると、白猫がこちらを見ていた。
真っ白な毛とブルーグリーンの瞳だ。
自分と同じ瞳の色の猫に思わず見入ってしまう。
――ミャー
ネコはこちらに気が付いたのか気の抜けた声で鳴いた。
少し悩んで、それから手を伸ばしてみても猫は逃げる様子が無い。
それどころか、塀からスタンと降りてまるで僕と斎藤君に挨拶をする様に足元で8の字を描いて歩く。
しゃがみ込んで手を伸ばすと額をこすりつけるように撫でさせてくれた。
ふっと息を吐くような音が聞こえて、斎藤君を見上げると口角が少し上がっていた。
どうやら笑われたみたいだ。
それに下校途中だったことを思い出した。
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