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「バイトまではまだ結構あるから大丈夫。」
先回りするみたいに斎藤君が言った。
猫がもっとと、催促するみたいにニャーと鳴く。
そっと撫でると猫は目を細める。
お言葉に甘えてもう少し猫を触らせてもらおう。
額をぐりぐりと撫でるとそれが好きみたいでうっとりとする。
「お前は美人さんだねえ。」
思わず話しかけると、ぶっと斎藤君が吹き出す音が聞こえた。
おかしなことをいったかな?と首を傾げながら猫を撫でた。
カシャという音がして振り返ると斎藤君がスマートフォンを持っていた。
「カメラ持って歩きたいな。」
眉根を寄せながらも斎藤君は笑顔を浮かべている様に見えた。
「猫の写真後で見せてくれる?」
僕が聞くと、歯切れが悪くああ、と返事をされた。
やっぱりスマートフォンで撮った写真は彼の中では駄目なのだろうか。
もう一度聞きなおす事もできなくて、そのまま猫を撫でるのに集中した。
カシャカシャとシャッター音がしていたけど時たま鳴く猫のニャーという声に意識はそちらに向いてしまった。
暫く撫でていると、猫は満足したのか再びふわりと塀に上ってしっぽを立ててゆらゆらと揺らしながら遠くに歩いて行ってしまった。
「行っちゃったね。」
「ああ。」
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