その後の…

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「ウニだよ。ウニ。」 点々と落ちている貝がらとウニがらを拾って斎藤君に見せる。 ウニはもうとげは波に洗い流されてしまっていて残っていない。 薄いベージュやグレーのウニの殻を見せると斎藤君がシャッターを切る。 斎藤君がシャッターを切る音は優しい。でも、不意に怖くなることは相変わらずある。 全てを見透かされる様な気分になることがたまにある。 僕がそう思っているのに斎藤君が気が付いているのか、それともいないのかは知らない。 僕の浅はかさを、浅ましさを知られていなければいいと思ってしまう。 馬鹿みたいに斎藤君の事ばかりで世界が回っていたり、頼ってばかりの自分がそれでも好きでいて欲しいし、他を見て欲しくない何てそんな事ばかりなのだ。 斎藤君の真剣な目にゾクリとする。先程までの様に上手く笑えなくて、だけど何かを話しかけることもできなくて微妙な表情になってしまった。 「なんで、泣きそうになってるんだよ。」 一旦斎藤君はカメラから視線を離して言う。 「泣きそうにはなってないよ。」 多分そうじゃない。斎藤君の視線が怖い訳でもない。 ただ、斎藤君を見ていると切なくなってしまうのだと伝えたら引かれないだろうか。     
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