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なんて言ったらいいのか分からなくて立ちすくんでいると「言いたい事は言えよ。」と言われる。
「ただ単に斎藤君を見ていると切ない気持ちになるってだけで……。」
上手く言えずもごもごと口の中で音が消えていってしまう。
斎藤君はカメラに視線を戻して一枚写真を撮った後、とても嬉しそうに笑った。
「俺も斎藤の事好きだよ。」
脈略無く言われて不思議な気持ちになる。その後、好きだと言われた事実にどうしたらいいのか分からなくなった。
「ん?切なくなるってそういう事だろ。」
そう言われて初めて、斎藤君が言ったことの意味が分かる。
「熱烈だなって思ったんだけど、違ったか?」
斎藤君の問いかけに首を横に振る。
「多分違わないよ。」
精いっぱいの笑顔を浮かべたつもりだが多分相変わらず泣きそうな顔をしている気がした。
それなのに、斎藤君はまるで気にした様子も無くカメラのシャッターを切っている。
「無理に表情作る必要はないから。
それ、俺にだけ見せる表情なんだろ。」
斎藤君がファインダー越しに微笑んでいるのが見えて、たまらない気持ちになる。
「そうかもしれない。」
と呟くと、斎藤君は満足気に笑みを深めた。
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