リイルレイラの薫香

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リイルレイラの薫香

 妹の体から絞り出した香水が、スカイブルーに変えていく。  憧れ、求め続けていた妹の色。私は、きらきらと輝くスカイブルーに包まれているのだろう。  妹が死ぬ数日前のことだ。 「やっと完成したの。お姉ちゃんに見せたい」  珍しく、私の研究室にやってきた妹がそう言った。  私も妹も国立研究所で働いていた。しかし配属された部門は異なり、研究所も広いため姉妹といえどなかなか顔を合わせることはない。  こうして呼びにきたのだからよほどの用事なのだろうと、私は呼び出しに応じ、完成品とやらを見に行った。 「……なに、この装置」  がらんと広い室内に、作動していない装置。  特に目立ったのは装置についていた二つのポッドだった。一つは人が入れそうなほどの大型で透明な液体が満ちているが、もう一つのポッドは小さく、中身は空である。  このポッドの間はケーブルで繋がっていて他にも機器類が接続されていたが、この装置が何に使われるものかさっぱり見当がつかない。  装置を見上げて唖然としている私と異なり、妹は満面の笑みを浮かべていた。 「これはね、オーラ抽出装置なの。私たち人類って、他人のオーラを視ることができるでしょう?」 「視ることはできるけど、みんな茶色のオーラじゃない。特に抽出したいと思えないけど」 「そう、定められた運命の人以外は茶色。だけど、この世でたった一人だけがスカイブルーのオーラを持つ」  オーラとは人間の感情に共鳴する光だ。  どうやら昔の人たちはオーラなんて視えなかったらしい。おそらく、オーラを視るため必要な感覚に、目覚めていなかったのだろう。人類は長い時間をかけて少しずつ進化し、私が生まれた時にはすべての人間がこの力に目覚めていた。  こうして話している間も、妹の背からもやもやとした茶色の光が伸びている。視ることはできるのだが触れることはできない。感情によって光が澄んだり濁ったりと変化はあるものの、色味は茶色から変わることがなかった。
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