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基本的に、人間が持つオーラは茶色なのである。
しかし。この光がスカイブルーに視えるのだという。それはきらきらと輝く淡青で、目を奪われるような美しさらしい。感情によって濁ったとしても、それすら美しいと感じる青である。
スカイブルーのオーラが視える者はたった一人。最高の相性を持ち、運命が選んだパートナーである。一方通行になることはなく、双方スカイブルーを視るらしい。つまり私たちは、生まれた時にはもうペアのくじを引いているのだ。
人を好きになることに恋だの愛だの関係ない。スカイブルーが視えたか。それが重要なのである。
「つまり。この装置はスカイブルーの相手を見つけるため?」
私が聞くと、妹は首を横に振った。
「それはできないよ。この装置は、人が持つオーラを液体に移すことだけ」
「……私にはよくわからない。これが、異動願いを出してまで作りたかったもの?」
「うん、これが作りたかった」
空っぽのポッドを撫で、瞳を細める。妹は相当な気持ちを込めてこの装置を開発したようだった。
「だって、スカイブルーが視えるって理由だけで恋人や伴侶を決めるのは、嫌だもん」
「この研究所が大騒ぎになるぐらい恰好いい、スカイブルーの相手がいるくせに。よく言ったもんね」
妹から『スカイブルーが視えた』と報告を受けたのは、ずっと前のことだった。
相手はこの研究所に勤める男。名をロイと言う。なかなか優れた容姿をしていて、女性研究員たちの憧れの的だったが、どうやら運命は妹を選んだらしい。妹もロイも、互いにスカイブルーが視えたそうだ。
「きらきらと輝くスカイブルー。それが私の恋人」
「よかったじゃない。ロイは根性のある男よ。安心してあなたを託せれる」
「……そうだね」
この世でたった一人のスカイブルーと出会ったのだ、妹が人生を共に歩むべき相手はロイである。二人は交際しているが、いずれ結婚するだろう。妹とロイ、二人がスカイブルーのドレスとタキシードを着て、教会に立つ日は近いと確信していた。
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