リイルレイラの薫香

3/12
前へ
/12ページ
次へ
 この世には、スカイブルーに出会えぬまま一生を終える人も少なくない。運命の伴侶と出会うことは奇跡である。だからこそ、目を引く美しいオーラなのだろう。  その奇跡を、妹はあっさりと手に入れたのだ。それも若い年頃のうちにスカイブルーを視たのだから、妹はとても恵まれている。 「お姉ちゃんは、視えない? まだ視たことがない?」  ロイと出会ってしまった日から、顔を合わすたびに妹が聞く。姉より先に運命と出会ってしまったことを気にしているのだろう。私はふっと微笑んで、何度目かわからない言葉を告げる。 「視えないよ。スカイブルーなんて」  それが私と妹の、最後の会話だった。その数日後に、あっけなく妹はこの世を去ってしまったのだ。  その日、久しぶりの休暇を得た妹は、用事があるからと出かけて行った。しかしいくら待てども家には帰らず、夜が更けて探しにでかけ――見つけてしまったのだ。  住宅区画から工業区画へ向かう途中の、人気のない暗い道。一日に車も数台しか通らないだろう道路に、妹が寝転がっていた。 「……レイラ?」  どこで寝ているの。酔っぱらっているの。そう声をかけようとして近づき、気づいてしまった。     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加