45人が本棚に入れています
本棚に追加
これだけでは、僕はデジャブーを見たんだろうと思っていた。
その不思議な現象は二ヶ月後にもう一度起こった。
その日、僕は六本木でバイトだった。
二一時ごろ日比谷線六本木駅で電車を待っていた。
その時、僕の後ろに並んでいる二人の酔っ払いが突然喧嘩を始めた。
「何だと、お前、何の文句があるんだ!!」
「あるさ、あんた、俺の足を踏んだだろう!!」
取っ組み合いを始める二人。そして、その一人が背負ったリュックが回転し、突然、僕を襲った。
バイトの疲れでボーッとしていた僕はリュックに押されてあっという間に線路に落ちてしまった。
そこに日比谷線の電車が入って来る・・。
僕は目を見開いた。
と気付くと、僕は六本木のいつもの店でまだバイトをしていた。
時間は二〇時過ぎ。あの事件が事実だとすると一時間後に僕は電車に轢かれる。
ただ僕はある確信があった。前回のトラックの事故も防げたから、今回も大丈夫だ。
二一時〇四分発の中目黒行きを待っていた。ただし前回とドアの位置を一つ変えた。
突然、左側で男達の叫び声がした。
「何だと、お前、何の文句があるんだ!!」
「あるさ、あんた、俺の足を踏んだだろう!!」
前回、僕が居た位置には誰も居ない。
電車が駅のホームに入って来る直前に、片方の男がリュックを振り回したが、
それは空を切っただけだった。
僕は理解した。
僕は死に直面すると、その約一時間前に『時間』を戻す能力を持っている事を。
最初のコメントを投稿しよう!