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「――これが部屋の鍵だよ。1階に掃除婦がいると思うから、帰る時は戸締りをしてその子に渡しておいてちょうだい」
「分かりました。では、暫くお借りします」
大家はルイスにオデットの部屋の鍵を渡し、アパートを出て行く。
ルイスは鍵を懐に納めると、階段をあがった。歩くたびに床板がぎしぎしと鳴り、なかなか古めかしいアパートだと分かる。
「こ、こんなところで本当にオデットが生活を?」
ノエルはしきりにあたりを見回していた。由緒正しきフランス貴族のノエルには、庶民の暮らしが物珍しいのだろう。
そんな彼を置いて、ルイスは二階の廊下を進む。
「ちょっと、待ってください!」
騒がしい声を出しながら、ノエルが追いかけてくる。
廊下には四つのドアがあり、白い扉に鍵がそれぞれ付いていた。
一番奥のドアの前で止まると、預かった鍵で扉を開けた。
「――ここが、オデットの暮らしていた部屋」
背後でノエルの声がした。
部屋へ入る前に、ルイスは室内を見回す。
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