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ルイスは肘掛椅子に腰かけた。
正面には、木製の椅子とそのすぐそばに暖炉がある。
「この肘掛椅子は、思慮深いオデット嬢がミラー氏のために用意したものだろう。だが、そちらの椅子よりも暖炉から遠ざけておいてあるのは、不自然だとは思わないか?」
ルイスは立ち上がり木製の椅子に近づいた。
その下には、絨毯がへこむように小さな丸い跡が四つある。
振り返り、肘掛椅子の足へ目をやる。
絨毯に残っている形状は、肘掛椅子に着いた四つの足の形とよく似ていた。
木製の椅子から離れ、肘掛椅子を持ち上げる。
壁際にそれを置くと、絨毯に敷いてある赤いスカーフをはぎ取った。
そこに隠されていたのは、うっすら残った血痕だった。血を水で拭きとろうとしたためか、カビがちらほらと生えていた。
(それでも消えず、肘掛椅子で血痕を隠したのか)
ルイスは膝を折り絨毯に目を凝らす。
「……これは」
赤茶けた血痕の上には、麻色の細かいゴミが点々とついていた。
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