プロローグ・探偵紳士は死を引き寄せる

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声と共に飛び込んできたのは、暴走する二頭立ての四輪馬車だ。 馬車は速度を落とさないまま、角を曲がる。 二手に分かれた馬の間にガス燈が挟まった。 驚いた馬が嘶きながらのけ反り、車体が傾く。 馬車は横倒しになり、御者が路上へ投げ出された。 起き上がった御者が、倒れた馬車の扉を慌てて開けた。 馬車から引きずり出したのは、青白い顔をした中年の紳士だ。 「誰か、医者はいないか! 旦那様が怪我をしているんだ! 呼吸をしていない、頼むから、急いでくれ!」 大声で叫んだ御者に、辺りが騒然となる。 何事かと店から出てきた人や医者を呼びに走った人、遠巻きに倒れた馬車を取り囲む人。 通りは一瞬にして事故現場と化した。 だが、やじ馬たちの中で冷静な態度を取る者が一人いた。
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