2章・誰が彼女を殺したのか?

8/8
261人が本棚に入れています
本棚に追加
/268ページ
ルイスはピンセットで血濡れたゴミを一つ摘まみ取る。 懐から出したルーペで観察すると、そのゴミはおがくずだと分かった。 「肘掛椅子に座り亡くなったのなら、椅子にもっと血が付着していそうなものだが、それもない。となると、犯人は床でオデット嬢を殺したのだろう。そして――」 立ち上がると、入口の前に敷いてある足ふきに目を止めた。 なぜか裏返しておいてある。 表側に向けると、おがくずと赤黒いヘドロのようなものが付着していた。 絨毯の汚れを見る限り、オデット嬢の血を踏んだわけではなさそうだ。 「血肉の混じった土に、おがくず……。この二つが靴に付く場所と言えば、思いつく場所が一つある」 二つの証拠を薬包紙に包み、ルイスはノエルを見据えた。 「処理した臓物を道にばら撒く食肉処理業者と、質の悪いパブがある場所。――この部屋にいたのは、イーストエンドに出入りしている奴だ」 そう言った瞬間、ノエルの双眸に希望の光が浮かんだ。
/268ページ

最初のコメントを投稿しよう!