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ルイスはピンセットで血濡れたゴミを一つ摘まみ取る。
懐から出したルーペで観察すると、そのゴミはおがくずだと分かった。
「肘掛椅子に座り亡くなったのなら、椅子にもっと血が付着していそうなものだが、それもない。となると、犯人は床でオデット嬢を殺したのだろう。そして――」
立ち上がると、入口の前に敷いてある足ふきに目を止めた。
なぜか裏返しておいてある。
表側に向けると、おがくずと赤黒いヘドロのようなものが付着していた。
絨毯の汚れを見る限り、オデット嬢の血を踏んだわけではなさそうだ。
「血肉の混じった土に、おがくず……。この二つが靴に付く場所と言えば、思いつく場所が一つある」
二つの証拠を薬包紙に包み、ルイスはノエルを見据えた。
「処理した臓物を道にばら撒く食肉処理業者と、質の悪いパブがある場所。――この部屋にいたのは、イーストエンドに出入りしている奴だ」
そう言った瞬間、ノエルの双眸に希望の光が浮かんだ。
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