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再び屋敷を出て馬車も使わずに向かったのは、屋敷の裏手にある教会だ。
古めかしい赤レンガ造りの教会は、昔は罪人が吊るされる場所でもあったらしい。
当時は住民が足しげく通う、集いの場所だったそうだ。だが、髑髏街が寂れた今では、日曜日であっても人がほとんど訪れなくなっていた。
黒い柵に沿って歩いて入口まで回ると、待ち構えていたかのように声がした。
「やあ、そろそろ来るころだと思っていたましたよ」
金属製の黒い扉が軋んだ音をたてながら開く。
出てきたのは、柔らかな草色の瞳の男だ。
年は30代前半。
背中にかかるほどの長さの黒髪を項で結わえ、くるぶしまで隠れる立襟の黒いキャソックを着ている。
片手に持っているのは聖書だ。
しかし、口には聖職者らしからぬ強烈な匂いの紙巻き煙草を咥えていた。
聖人のような微笑みを携えたこの男は、神父グレゴリーだ。
グレゴリーは、ノエルの訝しげな視線をものともせずに、三人を教会へ招き入れた。
「わーい、ルイスちゃんだ!」
敷地に入ったとたん、幼い少女が飛びかかってきた。
この教会で墓守をする少女メルは、無邪気な顔をルイスに向ける。
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