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「アホ餓鬼、抱き着いたら蹴っとばすからな。それから、ルイスちゃんって呼ぶな」
「むむっ、相変わらずつれないんだからぁ……。ル・イ・ス・ちゃーん!」
突き放すようにルイスが言うと、メルはしゃがみこんで泣きまねを始める。
栗色のおさげを持って眉を下げる姿は、一見健気な少女のようだ。
その姿に騙されたノエルが、抗議の声をあげた。
「ひどいですよ、ルイス君。こんな子供にまで、そんな口をきくなんて」
屈んだノエルが手を伸ばすと、メルは灰色の質素なドレスをひるがえしてかわす。
「このお兄ちゃんは、もしかしてルイスちゃんの新しい金づる?」
「金づるって! せめて、依頼人と言ってください」
びしっと指さされたノエルが、声を裏返す。
取り乱すノエルを、少女は青い瞳を瞬かせて見つめた。
「まあいいや。――それじゃあ、メルちゃんはお仕事に行くからバイバイ、お兄ちゃん」
ふいと視線をそらして、メルはノエルの胸を突き飛ばした。
だが、走り去ろうとするメルの襟首をルイスが掴む。
「おい、さっきポケットに入れたものを出せ」
「うぐっ……」
少女は小さく呻く。苦々しく顔を歪めると、ポケットから小さな袋を取り出した。
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