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「それは、僕のお金! 小分けして体中に隠しておいたのに」
パタパタと服の上から体を叩き、ノエルはお金の隠し場所を確認している。
「盗られたことに、全然気が付きませんでした。でも、どうして分かったのですか?」
尊敬を込めた視線を送られ、ルイスはため息を吐く。
「……あほか、破れたポケットから落ちたのをこの餓鬼が拾ったんだよ」
「ほんとだ、破れてる。いつの間に!」
答えたとたんにノエルはポケットをひっくり返して、顔を青くした。
「だから、あれほどダサい服は燃やしてしまえと言っただろうが。並んで歩くのが恥ずかしい」
「でも、繕えばまだまだ着られますから、大丈夫ですよ。こう見えても針仕事は得意なんです。オデットによく、刺繍を習っていましたから」
国を出る前に針道具も持ってきたんですよ、とノエルは付け足した。
「お前はしっかりしているんだか、抜けているんだか、よく分からない奴だな」
「間抜けじゃん。こんな子供にお金スられちゃうんだから」
頬をふくらましたメルは、ペッと唾を吐いてグレゴリーの背後に逃げ隠れた。顔をのぞかせて舌を出す姿に、ノエルはわなわなと震えている。
「メル、ミートパイをあげますから、あっちに行っていなさい」
子供に馬鹿にされるノエルを可哀そうに思ったのか、グレゴリーが言った。
「……分かったよ。じゃーな、ルイスちゃんとマヌケ男」
グレゴリーから小ぶりなパイを受け取ったメルは、教会の中に走り去る。
「では、オデット嬢に会いに行くぞ」
メルをぼんやり見つめるノエルの肩を、ルイスは叩いた。
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