261人が本棚に入れています
本棚に追加
2章-3
教会の裏手にある墓を案内するグレゴリーの後を、ルイスとノエルはついて歩いていた。
墓守のメルが手入れをしているとはいえ、この墓地を訪れる者はあまりいない。
おかげで、墓石には苔が生え、朽ちて崩れかけている物まである。
供えられた花もない寂れた墓地を進んでいくと、ようやくグレゴリーが立ち止った。
「――ここが、オデット・ディノワール嬢のお墓ですよ」
葡萄の木の陰にある墓石は真新しく、白い十字架に木漏れ日が映り込んでいる。
土は掘り返されたばかりだからか、湿り気を帯びて他の墓のものよりも色が濃い。
死の生々しさを伝える土を見たとたん、ノエルの顔から血の気が引いていく。
そんなノエルを横目に、ルイスは言った。
「グレッグ、例の写真を見せろ」
「ええ、構いませんよ。ただし、大事に扱ってくださいね」
グレゴリーは墓石の前で十字を切ると、懐から数枚の写真を取り出す。
「それはなんですか?」
写真を受け取ったルイスの手元を、ノエルが覗きこもうとする。
それを交わし、ルイスは写真を見た。
「オデット嬢の遺体の写真だ。――お前は見ない方がいいぞ」
「いえ、見せてください」
その言葉に、ルイスは僅かに目を見開く。
ノエルの顔はいつもの気の弱そうな表情ではない。覚悟を決めた男の顔だ。
最初のコメントを投稿しよう!