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「――おしい、外したか」
御者の手の横に命中した銃弾を見て、少年は舌打ちした。
ライフルが仕込まれた杖の先から、硝煙が立ち昇る。
男は石畳に突き刺さる弾丸を見つめたまま、身を震わせた。
「では、あとはよろしくお願いしますよ、巡査殿」
少年は呆然とする警察官の肩を叩き、やじ馬の群れへ視線をやる。
「ああ、そうだ。……みなさん、もしも探偵の力が必要な時には、髑髏街のクロフォード邸へお越しください。ロンドン期待の新人探偵ルイス・クロフォードが依頼を受けますよ。ただし、受ける依頼は死の香りのただようものに限りますがね」
振り返り少年は目を細めて微笑む。
妖しくも美しい表情に人々が魅了されていると、ふいに路地に風が吹きこんだ。
風は少年の髪を舞い上げ、その下に隠れていた顔を鮮明にした。
そのとたん、人々は息をのんだ。
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