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2章-2
アパートを出た後、ルイスとノエルは一度、クロフォードの邸へ帰った。
屋敷に着いてすぐに、ルイスは荷物を抱えたノエルを部屋へ案内した。
「この客室を好きに使ってくれ。最初に断っておくが、屋敷には通いのメイドが数人いるだけだからな。自分の世話は自分でしろ」
黄色と緑を基調で飾り立てられた寝室は、数少ない客人用だ。
オークやマホガニーを使用した家具に、四隅に柱のある古風な天蓋付きの寝台。
牡丹や孔雀、松などが描かれた、東洋風の壁紙。
これらは、ルイスの父親アラン・クロフォード伯爵の趣味だ。
「え? こんな立派な屋敷に住み込みの使用人がいないんですか?」
「誰かに世話をされるのはあまり好きではないんだ」
「あまり好きじゃないって……。英国の貴族の間では、そういう変わった流行でもあるのですか? 聞いたことありませんけど」
「余計な詮索は不要だ。荷物を置いたら、さっさと下に降りて来い。オデット嬢に会いに行くぞ」
「オデットに会いに行く……? はっ! まさか、幽霊ですか!」
ノエルは「さすが死神探偵!」と喜びながら、目を輝かせる。
「アホたれが……。幽霊なんぞに会って何の得になるんだ。死体に会いに行くんだよ」
ルイスは額を手のひらでおおった。
呆れながら先に玄関ホールに向かうと、ノエルはすぐさま後に着いてくる。
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