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次の日。ネットの掲示板に自分の名前と住所が晒された。
それを知った日本の偉い人、マスコミの皆さん、小学校の同級生…たくさんの人が家の前に集まった。少年は母親に泣きつくも、宿題をしないアンタが悪いと怒られる始末。ひどい、自分が一体何をしたというのだ。いや、何もしてない、宿題をしていない!
実は昨日、それでも宿題をしようとしたけど怖くて出来なかった。せめて漢字の書き取りでもと漢字ドリルを取り出すも、それを持つ手は震えていた。やばい、このままでは、自分のせいで本当に世界が滅ぶ。
「少年くん! お願いだから宿題をやってくれ!」「少年さん、ご自分のせいで世界が崩壊する気持ちを一言!」「少年ー! お前ネットでめちゃくちゃ叩かれてるぞー!」
ざわざわ、ざわざわざわ…外から流れる雑音は収まらず、少年の鼓膜を刺激し、精神を脅かした。怖い、怖い…耳を塞ぎ、お気に入りのタオルケットを被り、現実から逃げようとしたが…。
「ちょっと! 外がうるさいってご近所から苦情が来てるからどうにかしなさい!」
母親の配慮のない言葉に、少年はついに堪忍袋の緒がキレた。
「うるせーーーー!!!」
算数ドリルを丸め、それをメガホンにして2階の窓から叫ぶ少年。マスコミや野次馬は、その様子をカメラやスマートフォンで写す。後日、この映像はネットニュースに使われた。
「うるさくて宿題が出来ないじゃん!!」
宿題! 少年の口から宿題という言葉が!! この10分後に『速報 少年、宿題をやっていた!』という記事がネットニュースに掲載されるであろう。
「少年さん、宿題はいつ頃終わりそうですか!?」
マスコミの質問に、言葉が詰まった。
未定である。予定は未定。夏休みの予定表はまだ真っ白なのだ、もう夏休みが始まって1週間経つのに。
何も言わない少年を見て、また民衆はざわざわし始めた。
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