2 猪田苑子の恋

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「チャージも飲食代も高額なうちの店が、成り立っているのは、どうしてだと思いますか?」  ふいに樫山が声を発した。  苑子はきょとんとした顔で、首をかしげる。「わかりません……」 「それは、この店が閉ざされている、ということにあります」 「閉ざされている?」 「店名も看板もなく、電話番号も公開していない、窓すらない閉じられた空間。そこにお客様は1日1組。ここが秘密の場所だからです」 「はあ……」  苑子には、樫山の言わんとすることがわからない。 「つまり、ここに来るお客様は、秘密の場所で秘密の話をしたいのです」と、樫山は言葉を足してみる。 「あ、なるほど……」 「そんな閉ざされた店に、誰の紹介でもなく、この店にやってきた方は、猪田さんが初めてです」  樫山は苑子の瞳をじっと見つめる。そのどこか非難めいた視線に、苑子の頬が再び赤く染まる。
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