19 店主樫山宗一と客(その3)

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 柔らかい唇の感触、静かに流れる時間。朝の太陽が、二人の頬を温かく照らしていた。  そっと唇を離し、樫山は由梨に訊いた。 「何か聞こえました?」  由梨は首を横に振る。 「何も、聞こえ――」  樫山は由梨の答えを待たず、もう一度その唇を塞いだ。
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